クリープハイプの現メンバー15周年記念公演「2024年11月16日」が11月16日に神奈川・Kアリーナ横浜で開催された。

2009年11月16日、現メンバーである長谷川カオナシ(Ba, Key)、小川幸慈(Gt)、小泉拓(Dr)の3人が加入し、現在の体制での活動を開始したクリープハイプ。この日、3人の加入から15周年の記念公演としてワンマンライブが開催された。クリープハイプの歴史において最大規模となるKアリーナには、15周年約2万人のファンが集まり、特別な時間を過ごした。

【ライブレポート】

■ライブ定番曲からの開幕

開演までの間、会場では8月にリリースした、クリープハイプのトリビュートアルバム「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」に収録されたナンバーが流れる。楽曲には、SEKAI NO OWARI、10-FEET、UNISON SQUARE GARDENなど人気を誇るアーティストらが参加。客席についたファン達は、それらの楽曲を口ずさんでおり、開演前からライブへの期待感が高まる。

最上階まで超満員の中、開演時間17時を過ぎたあたりでアリーナが暗転。尾崎、カオナシ、小川、小泉が続々とステージに登場し、観客から歓声が沸き起こる。客席の様子を見た尾崎が

「最後までよろしくお願いします。いろんなバンドが『1つになろう』って言うけど、物理的に1つになりましょう」

と言うと、いきなりカオナシがベースが鳴り、「あの」イントロが始まる。それが「HE IS MINE」だと分かった瞬間、会場の盛り上がりが一気に加速した。轟音が鳴り響き、ライブの開幕を告げる。これほど1曲目に相応しい曲はないだろう。続く2曲目は、カオナシがメインボーカルを務める「火まつり」。力強く刺激的で、どこかセクシーさを感じさせる演奏が繰り広げられる。3曲目は浮遊感ある小川のギターから始まる「NE-TAXI」。初期の楽曲が登場し、ファンたちは歓喜。尾崎の高音が強く美しくホールに響き渡り、パフォーマンスの調子は絶好調。

■新曲「生レバ」

4曲目、ここでいきなり披露したのは新曲「生レバ」。12月4日リリース予定のニューアルバム「こんなところに居たのかやっと見つけたよ」に収録予定の楽曲だ。ステージ前から炎が噴き上がる中、ロックでダークなサウンドが放たれる。観客たちを音でぶん殴り、ステージから目が離せない、強烈なインパクトを残した。

続いて「イト」「栞」の人気曲が連発。生レバでダークな雰囲気に持っていった会場を、一瞬にして明るくしてしまう。前半でライブの定番曲が続々と演奏されることに、尾崎が

「定番曲をこうやって最初にやれば、あとの方で懐かしい曲ができる」

と発言。この後にどんな曲が待っているのかと、観客の心により一層期待感を抱かせる。

温かく優しい「陽」が演奏されたあと、インディーズ時代から愛される「左耳」「オレンジ」が続く。12曲目に演奏されたのはカオナシボーカル曲の「月の逆襲」。がらっとサウンドが変わり、ポップでキャッチ―な曲調へ。月のような黄色い照明に照らされながら、カオナシと尾崎が「じゃあね」を繰り返し、会場を優しく包み込んだ。

13曲目、憂いと切なさを感じさせるギターイントロから始まる「憂、燦々」。この曲は、サビにおける尾崎の訴えかけるような歌唱と、そこに重なるカオナシのコーラスも素敵だが、その裏で鳴るギターのサウンドが特に切なくグッと来るので注目して聴いてほしい。

■「15」という数字

MCでは尾崎が『15周年』について触れ、苗字が尾崎であるために幼少期に「豊」と呼ばれていたエピソードを話す。どうしても「15の夜」で尾崎豊を思い出すと話し、

「”バイクを盗んだ尾崎”もいれば、原付の免許試験に落ちた尾崎もいて」と語った。

そしてこの見事なオチから繋がる14曲目「四季」。この曲のMVでは、尾崎が原付に乗るシーンを撮影する予定だったが、原付の免許試験に落ちたため、メンバー全員で自転車に乗るシーンに変更になったという裏話がある。小泉のバスドラの四つ打ちから始まり、尾崎のアコースティックギターの音色が会場を温かく和やかな雰囲気に変化させていく。

続く15曲目は、ライブではレアな楽曲「目覚まし時計」。シングル「寝癖」のカップリングとして収録されている。尾崎のアコースティックギターとカオナシのボーカルが穏やかに響く。日々の忙しさに追われ、朝起きることさえ憂鬱に感じてしまう、そんな人に聴いてほしい1曲だ。

ライブ後半戦では、「しらす」「ナイトオンザプラネット」とカオナシがキーボードを担当する楽曲が続く。「しらす」では、カオナシがボーカルを務めながら、曲中に身振り手振りを取り入れ、不思議な世界観を作り上げていく。「ナイトオンザプラネット」では、星屑のような無数のライトに照らされる中、尾崎のラップ調の歌唱と小川の特徴的なギターのサウンドが繰り広げられ、カオナシのジャズ調のおしゃれなピアノへと繋がれていく。

■これが「クリープハイプ」

ライブ終盤、ここまでの雰囲気からがらっと変貌させた19曲目「週刊誌」。小川のノイジーなギターサウンドのイントロから始まる、疾走感を感じさせる1曲。「下北の大学生」を「横浜の大学生」に変えて歌い、大きな歓声を浴びた。続く「蜂蜜と風呂場」では、「風呂場」を印象付けるシャボン玉が客席に放たれる。直接的な表現を避けながら、こんなにもエロい歌詞に仕上げる尾崎の巧みな言葉遣いには圧倒される。

21曲目にはニューアルバムから「天の声」を披露。MCで尾崎は

「普通から漏れてしまうお前のために。そんなお前のために歌ってんのにな」

と語っており、「天の声」はそんな「お前のために」という思いをそのまま曲に起こしたような楽曲だ。バンドが大きくなればなるほど、もう自分のための音楽では無くなってしまったと遠く、寂しく感じることもあるけれど、「天の声」がそんな人をそっと照らしてくれる。

そして最後は「明日はどっちだ」「風にふかれて」が続く。「風にふかれて」の「君はまだ 生きる 生きる 生きる 生きるよ」というフレーズを聴くと、どこか心に安心感を抱く。明日への一歩、確かな希望を感じさせてくれる楽曲で、本編は幕を閉じた。

■「アンコールはどうする?」

近年のクリープハイプはワンマンでもアンコールをしない。この日、長い長い拍手の後、ファンの思いに応えるように4人は再びステージに戻ってきた。尾崎が「アンコールはどうする?」と問いかける。察しのいいファンはこの時点で確信する。かき鳴らされたのはもちろん、冒頭でこのフレーズが登場する「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」。サビ前には、この曲のMVでも使用されている赤い紙吹雪が炸裂、会場にひらひらと舞う。そしてサビ、尾崎のハイトーンボイスがホールに美しく強く響き渡る。その光景が、観客の心に強く印象付けられた。

【セットリスト】

01.HE IS MINE

02.火まつり

03.NE-TAXI

04.生レバ

05.イト

06.栞

07.陽

08.一生のお願い

09.左耳

10.リバーシブル―

11.オレンジ

12.月の逆襲

13.憂、燦々

14.四季

15.目覚まし時計

16.しらす

17.ナイトオンザプラネット

18.キケンナアソビ

19.週刊誌

20.蜂蜜と風呂場

21.天の声

22.愛の標識

23.明日はどっちだ

24.風にふかれて

〈アンコール〉

25.おやすみ泣き声、さよなら歌姫

By Haruka