はじめに
CRYAMYの全国ツアー『人、々、々、々』。ツアーファイナルとなる18公演目として、2024年6月16日に日比谷野外大音楽堂で開催された『CRYAMYとわたし』のライブレポートである。3時間半、全34曲という超大作だった。

◇セットリスト
1.WASTAR
2.sonic pop
3.普通
4.crybaby
5.まほろば
6.光倶楽部
7.変身
8.注射じゃ治せない
9.豚
10.E.B.T.R
11.Pink
12.HAVEN
13.物臭
14.ディレイ
15.ALISA
16.GOOD LUCK HUMAN
17.ディスタンス
En.1
18.道化の歌
19.テリトリアル
20.鼻で笑うぜ
21.戦争
22.ten
23.ウソでも「ウン」て言いなよね
24.完璧な国
25.天国
En.2
26.葬唱
27.待月
28.月面旅行
29.プラネタリウム
30.街月
31.マリア
32.THE WORLD
33. 人々よ
34.世界
2.ライブレポート
大好きなバンドが一区切りを迎える瞬間に立ち会うのは、初めてだった。
2023年12月からスタートしていたツアーがファイナルを迎える。とても思い出深いツアーであり、公演の数日前から緊張感が高まっていた。
緊張感が高まっていたのは、ファイナルだからや初めての日比谷野外大音楽堂という会場だからというだけではない。
このツアーが始まる前に発売されたアルバム『世界」。
それまでのCRYAMYの音楽性とは異なる方向に舵を切り、攻撃的で破壊的で、陰鬱、それでいて繊細な全11曲が収録されている。
このアルバムを視聴したファンの多くは、衝撃を受けたとともに、CRYAMYの解散を意識したのではないだろうか。やり残した音楽を全てやりきるような、遺書のようなアルバムだという印象を受けた。

ライブ2日前のXにて、Vo.カワノ自身が解散を匂わせるような投稿を残している。
『 時折こちらを借りて残していた俺からの私信は、これでもうありません。』
『 あとは直接。目なり、声なり、息なり、ただそこにいることなり。』
これがラストライブになるのかもしれない、まだ信じられない、そうして始まった本公演。

1曲目は、カワノの独唱から始まる「WASTAR」。
カワノの声に観客全員が耳を澄ましていた。
序盤のMCで心にのこった言葉がある。
「かっこいい言葉って考えるようなものじゃなくて、その辺に転がっている言葉」
シンプルで飾らない、実にストレートな表現。
13曲目「物臭」
私がCRYAMYに出会った楽曲であり、幾度となく救われてきた楽曲である。
16曲目「GOOD LUCK HUMAN」
日が傾いて会場全体が夕陽に染まりだした頃。
計算していたかのように「君が飾った夕方を窓から覗くことが好き」というフレーズで始まるこの楽曲に、観客の心が揺さぶられていた。
「裸の涙が一番速度が早い誓いさ」という歌詞は何度聴いても感銘を受ける。

カワノは遺言として、「身体に気を付けること」「悪い人もいるけど良い人もいるのを忘れるな」「長生きすること」と残した。
生きろ、諦めるな、信じろ。
ライブを通してこれらの言葉を、繰り返し繰り返し叫んでいた。
31曲目「マリア」
カワノは一番最後の歌詞「死ね」を言わず、「生きるんだ、何があっても生きろ」と叫んでいた。
カワノがそうした温かく強い呪いの言葉を述べたあと始まったのが、33曲目「人々よ」
カワノがかき鳴らすアコースティックギターの音が野音に響き渡っていた。
34曲目「世界」
カワノが命を削って書いた楽曲で、この長い一日の終わりを告げた。
演奏を終えてカワノがステージを出る時、ギターを振りかぶり破壊しようとしている素振りが見えた。しかし直前で立ち止まり、そのまま裏へと消えていった。
もしかすると、CRYAMYはこれからも続いていくのかもしれない。心の中でそっとそう願いたい。